二月十七日

6時起床。

ホテルをチェックアウトし、近くのセブンイレブンで朝食を購入。7時20分発南彦根発京都行きに乗り込む。彦根は寒い。車内で雑口罵乱6を読む。

京都から国際会館行きに乗り、8時50分頃到着。建築家森田一弥さんと待ち合わせ。昨年10月の釜山以来。近くのモダンな喫茶店で朝食スコーンとブレンドコーヒーをいただく。森田さんの最近考えられている建築感を伺う。生態学的見地から建築の発生原理について思考を深められていた。特に興味深かったのは、幹と枝葉の関係から世界各地の建築材料技術発生と伝播について。つまり世界各地の建築技術・材料・構法は枝葉(環境によって変化適応させる)であり、その根底となる幹の部分つまり遺伝子は共通する、といった話。先日開催された建築フォーラムで話したという。彼のBLOGにはその話の一部が語られる。また、僕の近況活動報告も併せてお話しする。森田さんの話はいつも新鮮で共感することが多い。相手にわかりやすい説明で話をされる。聞いていてノイズが全くない感じだ。

11時前に息子さんの次郎君を迎えに近くのサッカー場へ。静原自邸に向かう。建築業をこなしながら家庭や子供たちの面倒もしっかり見る。まさしく理想の父親。車内ではスペインの教育やサッカー文化についてのお話。スペインでは叱るのではなくひたすら褒める教育方法らしい。

静原自邸に到着する。カタランヴォールトのトイレが完成していた。ポリカーボで間仕切りられ、いい感じに仕上がっている。静原は雪模様で山間部とその集落の景観が美しい。

最近のプロジェクトや同志社大学教会コンペ守山中学校コンペの話などについて話しこむ。UAAでも取り組んだ教会コンペ。その一等案は、敷地を分断する通路のあり方に対して、持ち上げられた水面で視線を隠しながら、柱を連続させて繋げるという明快な表現だった。一枚のパース図で意図がはっきりと伝わる。

昼食に長女ミコちゃんの造ったトマトパスタを頂く。彼女は一ヶ月後に高校受験を控えているらしい。美味。

昼食後に、車で市内に向かう。辻村久信デザイン事務所の設計した喫茶葦島へ。店内はエレベーターを上がってすぐに客席が並ぶ開放的なもの。特に照明計画が良い。天井には照明器具が一切無く、間接照明と障子から差し込む光のみで調節される。話は建築詳細図のあり方について。詳細図を挙げることはあくまでも自分のしたいディテールを表現するための伝達ツール。参照すること=既存にあるディテールを使うことになるから、あんまり恐がる必要は無いよ、とアドバイスを頂いた。15時過ぎに森田さんと別れる。半日近くお付き合いしていただいた。感謝。

17時に急遽約束した研究室後輩の若松ケンちゃんに会う予定。先に直前予約した三条にあるホテルアルファにチェックイン。一泊4500円。

三条商店街入口付近でケンちゃんと待ち合わせ。2年振りくらいかな。OPA裏にある居酒屋へ。この二年間の事務所話を伺う。相当過酷な環境で仕事をしている。話の内容は割愛する。労働環境をきちんと整備しないと後人が続かない。バブル期の価値観に振り回され、僕たち世代が被害を受けるのはあまりにも理不尽だ。

二件目は布野研ご用達の半分庵へ。三件目は写真家甲斐扶佐義さんの経営する「八文字屋」へ。この店の雰囲気は雑居ビルのむき出し内装で、店内は煤で薄汚れていて汚い。しかしレコードやリーフレット、書籍が山積みされ、ポスターがランダムに貼られており、いい雰囲気を醸し出す。甲斐さんは記憶力のいい客の会話を注意深く耳に入れ、ほどよい距離感で絡んでくれる。面白い場所だ。焼酎を並々と注いで頂いた。このラフで気前のよいサービスもうれしい。

ケンちゃんには、30代までの自分の計画をしっかりもつよう話す。本人も当然その意識で行動している。近い将来一緒に何かできる関係になればうれしい。

0時にケンちゃん終電に合わせてお別れ。互いの健闘を祈る。缶ビールと漬物を買って、ホテルに戻り、ここ数日の出来事や研究室時代を思い返す。1時過ぎ就寝。